2007-03-29

21世紀に大変革は起こるか?-3

ここで覇権のノウハウについて考えてみます。覇権の元祖、ローマはそれを確立する過程で軍事力とともに文化も使ったと思われます。塩野七三氏は、「紀元前3世紀とは、偶然にしろ、地球の東と西で大規模な土木工事が始まった時代でもある。東方では万里の長城-----3世紀の秦の始皇帝時代に建設された長城だけでなく、16世紀の明の時代の建設の長城まで加えると、その全長は5千キロにおよぶ。

西方では、ローマ街道網----3世紀から後2世紀までの5百年間にローマ人が施設した道の全長は、幹線だけでも8万キロ、支線まで加えれば15万キロに達した」、と「ローマ人の物語」に書いています。そしてなぜ、支那(原文)とローマが別々のものを建設したかということについて、支那は防壁によって異民族との往来を絶ったけれど、防御には不利と考えられたとしても、ローマでは、国家を発展させるには栄養を運ぶ血液が必要と考え、街道網という血液網を整備することは不可欠であると考えた。として、国家におけるインフラの重要性を指摘しています。

さらに、街道や上下水道などのハードなインフラと同時に、安全保障、税制、通貨、郵便などのソフトなインフラも普及させたと記述しています。私の考えでは、つまりローマは、その文化も波及させたと言えるのではないでしょうか。

いにしえの中国は、強国であっても覇権国ではありませんでした。なぜなら万里の長城をせっせとこしらえていたからです。朝貢はあったものの一時的なものでした。しかしながら日本や韓国など、その周辺国に文化的な影響を与えたことは否定できません。反対にモンゴル帝国は、異民族を征服して大帝国を築き、日本にも元寇となってやって来ました。しかし大帝国としては、分裂したため短期間に終わりました。他文化を受け入れても、波及させる文化はほとんどなかったと思われます(誰が書いたのか?ウィキペディアにモンゴル帝国の虐殺謀略説が書かれていたのは、とても興味深い)。

覇権を握っていたイギリスは、植民地に文化、インフラを波及させ、産業革命によってそれを市場化しました。アジアの覇権を目指した大日本帝国は、傲慢さが出た故か失敗しましたが、満州、韓国、台湾にインフラを残したことは否定できないことです。そして日本を破ったアメリカは、日本を占領して実質的な直接統治をおこなったのち、アメリカ文化を波及させることによって間接統治に成功したと思われます。

これは世界的にも言えることで、とくに冷戦後の単独覇権の成立によってグローバリゼーションというアメリカ文化を波及させ、軍事力以上に間接的な影響力を強化しました。金融システムによる世界経済のコントロールは、その好例と思われます。映画におけるハリウッドの影響なども同様でしょう。つけ加えると、アメリカは戦後日本に援助と朝鮮戦争という、経済再生のための機会を与えたことになります。

以上、覇権には軍事力と謀略以外のノウハウも必要だと思いました。では最近の注目株、台頭する中国の覇権についてはどうなんでしょう。たしかに古の日中関係では、中国の国力、文化が圧倒的に高く、その文化や技術を受け入れていた日本には、(中国が求めれば)覇権を認めるメリットがありました。しかしながら現在では、日本が技術や資金を提供したとしても、中国から得られるものがあるのでしょうか。

あるのは生産基地や市場としてのメリットだけで、それに軍事的な脅威が加わります。民主主義という西洋文化の影響を半世紀以上受けてきた日本が、資本主義の一部を導入したにすぎない共産主義を、統治のノウハウとして受け入れることができるでしょうか。

中国はまだ覇権のノウハウを勉強中と思われます。けれども、最近の状況を見ていると早急に習得しているのかもしれません。色々な場所で日本政府の対応の拙劣さが指摘されているので、あえて言う必要もないかもしれませんが、たとえ覇権を握ることそのものに意思がなくても、脅威に対抗するためには、そのための研究をするべきでしょう。

システムとイデオロギー:
システムという言葉を誰が発明したのか知りませんが、私はこの言葉の汎用性に驚いています。国としての体裁を整えている集団は、様々なシステムによって成り立っています。例えば、立法システム、行政システム、司法システム、課税システム、福祉システム、教育システムといくらでも挙げられそうです。

企業も同じように、管理システム、生産システム、オマケに人事システムなど。さらに私は、脳の思考システムで文章を考え、それを神経システムで指に伝え、パソコン・システムのキーボードを叩き、画像システムで確認します。システムが整備されていることによって、我々は容易に必要とする情報を得て行動することができます。ただし、システムが正しく機能しているという前提が必要です。

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